電車移動が多い僕は今日も京阪を利用。

京都方面へと帰る途中、向かいの席に座っている女性の隣にどかっと若い男が座った。

男は荷物を女性にガンガンぶつけている事も気にせずごそごそと中身の雑誌を取り出し、読みはじめた。

「うわー、嫌な感じの人やなー。」

あまり関わりたくないタイプの人である。よく見ると雑誌は美少女アニメ系である。腕にもそのキャラクターの腕時計をしている。男はくつろごうとして、足を前に投げ出してその雑誌を読み始めた。

「きっと、アニメ以外、他人とのコミュニケーションにはあんまり興味がないんやろーなー」

と想像していると、男はそのまますぐに寝てしまった。

その時である。

一枚の原稿用紙が雑誌の下からずり落ちているのが見えた。なにやら作文らしきものが書いてある。タイトルは

『片思いの先に』 ○△□×(←その人の名前)

・・・一気にその人の人間味を見たような気がした。
きっとこの人にも片思いをするような相手がいるんだろうと思うとホッとした。

しばらくすると男は熟睡し、その原稿用紙はずりずりと床まで落ち、その全貌があらわになった。
普通はここで「落ちましたよ」と用紙を渡すのだが、せっかく読める状態にあるのに読まないのはもったいない。

「ゆみこは隆の昨日言った一言が気になって仕方が無かった。」

みたいな感じの純朴な小説が書いてあった。読んでいる途中、僕の隣に座っているおじさんも一緒に読んでる事に気がついた。おじさんもその作文が気になっていたらしい。

「面白いですね。」

と2人で顔を合わせ、さらに読み進めた。
すると、急に男が目を覚ましたので2人とも原稿用紙から顔をぱっと背け、見てないふりをした。

男は原稿用紙を落とした事に気づかず、また寝だしたので僕とおじさんはまた読み始めたが、残念ながら降りる駅に着いてしまい、タイムアウト。

「残念だね。」

という顔をおじさんにされながら、僕は電車を降りたのであった。

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